生徒会長様の、モテる法則
来た話題替えのチャンス!
これで私の勝ちよ!!
「あ、久遠寺くんチャイムなったよ教室帰らないと」
「あーいいんです、うちのクラス次は自習ですから」
数秒で話題終わったー!!
考える様子もなく返ってきた言葉で、また室内が静まり返る。
それから彼のくすぐったい視線も戻ってきて、どうにもならない気恥ずかしさから私は目を回しながら次の話題を模索しはじめた。
何がある?
よく考えたらあんまり共通の話題ないんじゃない?
いや、片っ端から引っ張り出せばなんかあるんだろうけどボキャブラリーが貧困すぎて何も思い浮かばない!
ああああ!
叫びたい!
さながら私は蛇に睨まれたカエル!いやミジンコか!?
いやいや、蛇がミジンコを肉眼で捉えられるかと言ったら…それはNO!
「百面相」
「へっ…!?」
「赤くなったり青くなったり…ホントにアナタは飽きない」
百面相がお気に召しましたか!ならば今から無表情でお送りいたします!
「…ブハッ」
私が無表情を決め込んだ瞬間、久遠寺くんが顔を背けて吹き出した。
失礼な!
「笑わなくてもいいじゃない!」
寝たままの体制で彼を引っ張ろうと手を伸ばすと、持ったままのビニール袋が一緒に引きずられてベッドから出てきた。
相変わらずピストルと沢山のチョコレート。
先ほどより少なくなったものの、まだ一人で食べきるには多すぎる。
「久遠寺くん」
堪えるように笑っていた彼に声をかけると、赤みがかった短い髪が揺れて隙間から優しげな目が私を捉える。
なんだか少し色っぽくて、跳ねた心臓を落ち着かせるように一つ咳払いをすると彼は私の手元にあった袋を横から眺めて口を開いた。
「春から貰ったものですか」
「食べる?」
「バレンタインだから?」
確かめるように聞き返されて一瞬たじろいだ。
人から貰ったものを渡すというのはバレンタインとして許されるのだろうか。
はっきり、それかと聞かれると歯切れが悪くなる。
「食べさせてください」