生徒会長様の、モテる法則
sp-8 生徒会室
「あの…」
「なんだ」
「助けてくれてありがとう」
「…」
怒ってる!?
ですよね怒って当然ですよねごめんなさい!
気まずい空気を払拭すべく明るい口調で話しかけてみるも、半ば無視された状態でアナログ時計が時間の流れを伝えている。
いきなり二人きりはマズいよ!心と命の準備が必要だって!
保健室に突如現れた要冬真は不機嫌そうに私と久遠寺くんを見下ろした。
怖い。
しかし今はまだ授業中なはずで彼がどんな経緯でここへやってきたかは謎だが、迷う足音もなかったので私がここにいたことは知っていた様子だ。
『じゃあ私はこれで失礼しますね』
刺すようなそれに動じる事もなく彼は椅子から立ち上がり、唖然としたままの私の手からチョコレートが入ったビニール袋を抜き取って要冬真の横をすり抜け保健室を去っていく。
ナチュラルにチョコレート持って行かれた!!!
戸が静かにしまり、ぶり返すように漂った薬のような臭いと緊張で胸が痛くなった。
どうしよう。
『行くぞ』
『え!…うお!』
見事小脇に抱えられた私は潔く保健室を退場し。
「今日保健医は出張だ。お前朝のホームルーム聞いてなかったのか?」
チョコレートの呪いで全く聞いてませんでした。
「全く…」
今生徒会室という他人が立ち入る事出来ない空間で今年一番の試練に立たされている。
いや、今年に入って2ヶ月だがこれは命の懸かった試練だ。
「ったく、帰り病院だからな」
呆れたようなため息と一緒に足に括り付けられた氷袋がカランと音を立てた。
広い生徒会室に用意されたソファーに二人きりで座るという新しい拷問。
しかしこれは神々が私に与えたチャンスだ。
私とヤツが妙な関係だろうと女子のアタックは止まることしらないわけで、要冬真についての“規約”には『彼女が出来たら文句は言わない』のような事項があったがどこにも邪魔するな・諦めろとは書いていない。
言葉の落とし穴である。