生徒会長様の、モテる法則
「いや、全く気が進まないよ。彩賀さん変わって」
「あら、私がジュリエットで鈴夏さんがロミオをやってくださるの?」
「え、いや…違う」
「実は私、そうならないかなぁと流れ星に頼んでいたのですが残念ながら衣装班でしたの。責任をもって鈴夏さんのスリーサイズをお測りしますわ」
うわわわわ、ある種欲望にまみれた指先だわ。
彩賀さんは容姿に反して変人だった。
あの強い意志を持った振る舞いからは考えられないほど。
ハルはその様子を見て楽しんでいるようだが、当事者にならないとこの悲しみは分かるまい。
「ようサル」
「!!」
私の机に影が出来て、さらに落ちてきた声に反射的に顔を上げると、ああ愛しのロミオ様。
「安心しな、ジュリエットへの愛故にロミオは死を選ぶんだ。お前が殺してるようなもんだろ」
「違うから、そういう結果論を言ってるんじゃないから、大事なのは過程!か・て・い」
そう、ジュリエットの愛でロミオが死んでしまうなんて美しすぎる。
いくら馬鹿馬鹿しい話だって、そこにあるのは愛なのだ。
私は愛なんて求めていない。
しかも、こんな奴に!!
「“愛してる”って、言ってみろよ」
要冬真の長い指は、迷うことなく私の顎に伸び軽く添えられた。
ヒヤリする感触と、近付く整った顔、その柔らかそうな唇から発した言葉に一瞬だけ、見とれてしまう。
が、それが手に取るように分かったらしい要冬真はしてやったりと言う風に口角を上げたものだから、すぐさま我に返った。
頭に血が上るのが分かる。
恥ずかしさと悔しさと、腹立たしさで。
「っ!このナルシスト野郎!」
「ハッ!せいぜい頑張りな、本気で俺様に惚れちまわないように」
陽気な高笑いで奴は教室から去っていった。
うざい、うざすぎる。
負けた自分が悔しい、キー!!
「演出はおれに任せて!!」
一部始終を見ていたハルが、親指をグッと立てたのでその指を強めに握ってやった。