生徒会長様の、モテる法則



「なにこれ」


一週間後。
予定通り吉川さんの手で作り上げられた脚本が手元に届いた。
明日読み合わせをするということで渡されたのだが、ページを捲るとドラマの台本さながらの仕上がりだ。


「くっそー…本格的すぎてふざけられない…」



「当たり前じゃないですか」



今日も二人で仕事。
と言っても、大人しくユキ君に任せて隣で手伝っているだけなのだが。


私の独り言とも取れる言葉に、ちゃんと返事をする彼は実に律儀である。




「この学園はどの家も結構な家柄ですから、こういうプレゼンテーションのような企画は本気で望んでるんですよ。技術学芸会自体にそういう趣旨があるんです」




「へぇー」



私の家は生憎ラーメン屋だ。
プレゼンテーションとか企画とか、ラーメンの企画?


アリエナーイ




「ユキ君のクラスはなにやんの?」


「二年生は観客に対する接待がテーマですから、当日はウェイターです」


「へぇ、じゃあ一年は?」



「一年は料理です。前菜からデザートまでをプロデュースする……、ていうか一緒にプログラムとか作ってるんだから気付いてくださいよ」





ユキ君はジトリと、湿っぽい視線をこちらに向けた。



出会った時から、変な目でしか見られたことがないわけで、どうにか先輩らしい一面を見せられないだろうかと、ここ数日頭を悩ませていたのだが悩んだ挙げ句に本人に聞いた所、

『先輩の脳みそのシワが増えない限りは無理ですね』


と、なんとも不可能な回答が返ってきた。




一生先輩扱いされない気がする。




私は気を取り直して、台本を捲った。
知らないことが多すぎて、普通に本として読めそうだ。


ロミオとジュリエットが出逢い、恋に落ち、世の流れに逆らえず最も残酷な最後を迎える。


ロミオは元々片思いの女がいたこととか、二人だけの結婚式を挙げていたとか…。


ん…?




「結婚式!?」




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