生徒会長様の、モテる法則
私と、久遠寺くんと、吉川さん。
奇妙な三角形を囲んで座った。
「仁東さんが演技に悩んでいたので、様子を…そうしたら久遠寺さんと素晴らしいやりとりをしてらっしゃったので…思わず見とれてしまいまして。仁東さんもう大丈夫そうですね」
毒気のない笑顔がこちらに向けられる。
小動物のようなそれは、荒んだ心を洗い流してくれるようだ。
「いやいや吉川さん、私久遠寺くんに騙されただけなの翻弄されたの」
「だから、鈴夏さんは単純なんですから大丈夫ですよ」
「おいこら、さっきから鼻につくんだけど」
「本当のことしか言いませんよ私」
ちっ…くやしい。
言い返せないもどかしさ、プライスレス。
「それにしても台本凄いなぁと思ってたら脚本家の娘さんだったんだね!通りで凄いわけだよ~」
私が台本を持って吉川さんと見比べるように交互に見ると、彼女は内気な女性特有の照れた表情を見せた。
「いいえ…私、まだまだです。書いたのは初めてですから」
「初めて!初めてでこんなん出来るの凄いよ~」
「鈴夏さん、あなた脚本の良し悪しなんかわかんないでしょう」
「…、ちっ」
「お母様にはお見せしたんですか?」
私の舌打ちを完全無視した久遠寺くんがそう言うと、吉川さんはフルフルと首を横に振った。
「母は脚本だけで作品を見ないんです。当日見に来るかと」
「すげぇ、プロっぽい!イタッ」
「アホみたいな発言してる場合じゃないですよ」
「へ?」
「あなた、冬真への敵対心で演劇を台無しにする気ですか?」
「はっ…!」
そうだったー!!
正に私、ターニングポイント!!!!
「い、いえそんな…皆さんには楽しんでやっていただければと」
吉川さんは両手をブンブン振り回して俯いてしまった。
私は久遠寺くんに叩かれた頭をさすりながらそちらを睨むと、彼は小さく溜め息をついて台本を手に取る。
「将来脚本家を目指してるんじゃないんですか?」