生徒会長様の、モテる法則
私とハルは叩かれた頭をさすりながらも、目くじらを立てる奴に怯えながら写真の目の部分に入ったシワを伸ばす作業に移った。
要冬真はというと、わざわざ私達の前の席に座ったまま台本を真剣に読み返している。
肘をついて膝の上でページを捲る姿は生意気な事に様になっており、周囲の女子が熱い眼差しを送っていることがさらに腹立たしい。
しかし、そんな視線にも気付かないほど奴は真剣だった。
恐らく完璧主義者なのだろうが、自分のやることには抜かりない。
まぁ何事にも一生懸命なのは良いことだと思う。
いやいやいや、絆されるな私。
「だいぶ綺麗になったかなー」
ハルが写真のシワをバンバン叩きながら首を傾げた。
慌てて机を見ると、山折り谷折りがなくなった見慣れたはずの見慣れない写真。
こいつが札になったら、全部折ってやろう。
「もうこれ以上は無理じゃね?ほうれい線みたいの出来ちゃったし」
「じゃあこのまま練習しよっかー、表情があった方がリアルっしょ!」
ハルはすかさず要冬真(ほのかに表情つき)を被る。
「駄目だわ、リアルさがなくなった…」
折れ線が見えた途端、ただの写真のように見えてきて逆に演技がし辛くなった。
私は、お面を被ったままフザケだしたハルを尻目に、本来ならば彼に何らかの制裁を加えるはずの要冬真に視線を移す。
奴は相変わらず真剣に台本を読んでいた。
私はその様子を何となく眺めていたが、その視線にも気付かない。
どうしたら、気付くだろうか。
ふとそんな考えが脳裏を過ぎり、頭を振るう。
断じて気付いて欲しいわけではない。
あまりにも真剣なものだから、邪魔してやりたかっただけ。
それでもただ見ているだけの私は、周囲の女子と何ら変わりのない、ただの女だ。