生徒会長様の、モテる法則
――…今なら
今なら、言えるかもしれない。
不意に、そんなことを思った。
フィルター越しの要冬真は思いのほか柔らかく、人を惹き付ける。
それは生まれ持っての容姿やオーラ、カリスマ性から来ているのだと思う。
物語の主人公というのは常に、そんな星の下の人間なのだ。
本一点に集中していた、要冬真の黒くて意思の強そうな目が、私に気付き流れるように此方へ向けられた。
いつから見てたんだ、とも言いたげな目だったが何か口にする事もない。
「…、愛してる…」
奴の表情が、少しだけ堅くなったのが分かった。
どうしても生身の本人を前に言えなかったあの禁断の言葉は、何の前触れもなくスルリと体から抜け落ちるように零れたのだ。
妙な顔をして固まる奴と、それを見上げる私。
見つめ合っているのか睨み合っているのか微妙な所だが、やけに長い時間視線は絡み合っていた。
しかし実際、時間の経過というのは気分で長さが変わるようで、要冬真に思い切り頭を叩かれ我に返るとたった数秒のことだつたらしい。
時計の針も殆ど進んでいなかった。
「痛!!!なにすんだよ!」
「お前が不意打ちで妙なこと言うからだろうが!」
「今しかないと思ったんだよ思い立ったが吉日って言うだろうが、欲しいものがちょっと目を離した隙に無くなってた、あーあの時買えば良かった!なんて気持ち貴様には分かるまい!」
「例えが微妙すぎだろうが」
「あーあー金持ちはこれだから!お金で買えない物はマスターカードですか!いやだいやだ」
騒ぎ出した私たちを、教室で作業していた衣装班やら演出班が注目しはじめた。