生徒会長様の、モテる法則
3-4 控え室
「ひーひーひーひー」
「何その呼吸法ー」
「あまりの緊張で気管支が狭窄して息がしづらい」
「何か怖いよー」
「あ!心臓が痛い!」
私が要冬真を克服してから、本番当日までは奴からのスパルタ特訓の日々だった。
“愛してる”を言えるようになり万事解決だと思っていたが、それは大間違い。
『おいサル、喜んでる場合じゃねーぞ』
要冬真の恐ろしいオーラで固まる一同。
“愛してる”を克服して教室は歓喜に沸いていたが、突然訪れたのは氷河期だ。
『な、なななな…なに…』
周囲に集まっていたクラスメートがそそくさと道を開ける。
奴は迷うことなく私の前に立ちはだかった。
怖い…!
『お前の棒読み演技…、どうにかしなきゃなんねーだろーが』
『あ…』
呆れたようにため息をつく奴に、一瞬空気が止まった教室が納得したようにざわめき出した。
『仁東、あと一週間。今度は演技力向上だな、頑張れよ!』
熱血漢・委員長。
バンジージャンプを躊躇う人間に背中を叩いて突き落としながら声援を送る、迷惑な男だった。
「あんな血の滲むような特訓したじゃーん!そんな緊張することないって☆」
「星マーク飛ばしてるけど普通演技の練習で血は出ないから、どこのスパルタ特訓?桜木花道だってシュートの練習で血なんか出してないよ」
「どっちかって言うと志々雄真実だねー!おれ全巻持ってる」
「あんな火傷だらけの人間に挑むなんて無謀すぎる…!頑張れ私!」
「鈴夏さん、そろそろ衣装着ていただけますか?」
彩賀さんが衣装室から顔を出す。
「はーい」
「はーい」
私とハルはふざけるのをやめて返事をした。
衣装室の扉が閉まる前に、ノブをキャッチして彩賀さんに続く。
背後に気配を感じて振り返った。
「ハル」
「んー」
「ついてくんな!」
「えー危ないからおれも行く」