生徒会長様の、モテる法則
「いやいや、衣装室周囲の警備を頼む」
「ラジャー」
敬礼をしたハルを見送って扉を閉めた。
「なんなんだ…最近ずっと付いて来るんだけど」
「桝古くんも心配してらっしゃるんですわ」
振り返ると、彩賀さんが煌びやかな衣装を持って待っていた。
想像していたより、三倍は派手なそれは中世の空気を残してあるが、今風に上手くアレンジされている。
「わぁ…!凄い!これ彩賀さんが?」
「うふふ…鈴夏さんの鍛え上げられた美しい肉体を想像しながら作りあげましたの…!」
「あ、あ…そうなの…、ありがとう…」
嬉しくない…。
頬を染めて、あらやだ言ってしまいましたわ!などと呟く彼女は、なんとも恋する乙女だが相手が私だと思うとなんだが恐ろしい。
若干、彩賀さんに引きながらも私はその衣装に袖を通した。
さすが、細かく採寸を計っていただけある。
腰周りも胸周りも、スカートの丈、腕の長さ、何もかもピッタリだった。
本格的な素材を使ったドレスは、ラーメン屋の娘だったら絶対着ることのないほど敷居が高い。
女性らしい服装をしたのは、初めてで正直恥ずかしいと思う反面、少しだけ嬉しいと思ってしまうのだ。
化粧もヘアセットも何もかも新鮮で。
「わ…」
自分が綺麗だとは言わない、それでも鏡に映る私は別人だった。
「仁東さん、綺麗ですよ」
吉川さんから掛けられた言葉に、思わず顔が赤くなる。
照れながらも笑顔を返すと、彼女は嬉しそうに笑った。
吉川さんは勿論クラスのみんなの、この技術学芸会に対する真剣さは十分理解したつもりだ。
要冬真だって、真剣だった。
絶対に、成功させなければいけない。
みんなの、吉川さんの為に。
「美しいですわ、鈴夏さん」
「はっ…、彩賀さん」
彩賀さんの事をすっかり忘れていた。
すかさず抱きついてくる彩賀さんに思わず苦笑いをしたが、彼女にもお礼を言わなければならない。
「二人とも、色々ありがとう」