生徒会長様の、モテる法則
「ねーねー格闘娘!」
「うわぁ!ビックリした!なにそれ私の事?」
「君以外に誰がいんのー?」
仰る通りで…。
私の机を二回、叩いたのは見知らぬ小さめの手だった。
驚いてそちらを見ると、興味津々に輝く二つの目がこちらを覗いている。
「おれ、あんな跳び蹴り初めて見た!」
柔らかそうな細い髪と、その大きな目はまだ幼さが残っていて子供っぽい。
口調も少し間延びしている。
「そりゃどーも…」
誰にも話しかけてもらえないと思っていたので、これは嬉しい誤算だ。
「忍者みたいだね!とうまに喧嘩売った人みたの初めてだよ」
「とうま?」
「君が跳び蹴りした人!かなめとうま、要、冬真、ね」
男にしては綺麗な文字が、ノートに書き込まれていく。
まぁ金持ちそうな名前だこと。
私は、奴の後頭部を眺めながら溜め息をついた。
形のいい頭、髪の色は今時珍しい黒だというのにむしろ似合っていて、窓から吹き込む風にゆっくり靡いている。
「あの人ってもしかして番長?」
「番長?んー…、そんなもんかな」
やっぱり!
金持ち学校でも番長いるんだ!
「でも、気を付けなきゃねー」
彼はゆっくり机に両腕をついて頭を乗せ、上目遣いで此方を見上げる。
犬のようなその仕草に、何故かイヤな予感がしてヒュッと息を呑んだ。
「とうま、めちゃくちゃ根に持つから」
彼の発言と同時に、授業の終わりを告げるチャイムがなる。
私は、その発言とチャイムに釣られて勢いよく椅子を引いた。
教室内に下品な音が響き、周囲の視線が一気に此方に注がれるが気にしている暇はない。
――逃げろ
本能がそう告げていた。
私は教室のドアに向かって全速力で駆け出す。
「頑張ってねー!」
扉に手を掛けたところで、先程の脳天気な声が耳に入り思わず振り向りざまに中指を立てたのだが、振り返った先に居たのはあの、ゴキブリ野郎だった。
「てめぇ俺に中指立てるとは良い度胸だな。捕まえて制裁してやる」
「ギャアアア!」