生徒会長様の、モテる法則
ハルは、本番前に私がやったのと同じように両手を広げた。
しかも少し得意気に。
「…、いや。いいや」
「ガーン!なんでー?」
まさか断られると思っていなかったという風に眉を下げて大袈裟にうなだれた彼を見て、何だか面白くなる。
いやいや、普通断るから。
「いや、恥ずかしいし」
「おれは恥ずかしくないよー!」
えー、一応女子なんだけど。花も恥じらう乙女なんだけど。
もしや、女扱いされてない?
「肩、震えてるよー!」
「怒りでですか?」
「違うよ!寒いんじゃないのー?」
「いや、確かに寒いんだけど…」
ハルの言葉に答えて、私はハタと息を止めた。
もしや…、寒いなら人肌で的な?
単純な思考回路だ。
突然喋らなくなった私を、彼は不思議そうに見上げている。
なんて、可愛い奴!!
「いや、き、気持ちだけ受け取っておくよ…」
私が彼から目線を逸らして手のひらを見せれば、頭を横に落としてこちらを覗き込む。
まだ諦めていないようだ。
「えー、でも演技中も寒そうにしてたって…彩賀ちゃんが」
今度は椅子をガタガタ揺らしながら少し拗ねたようにハルが口を尖らせた。
「え、嘘まじ?袖で見てて解るくらい?」
「わかんないけど、多分気付いたの彩賀ちゃんだけじゃない?おれ怒られたもん。『小さな変化にも気付かないなんて“仁東鈴夏親衛隊”の風上にもおけませんわ!』って」
「え、なにその気持ち悪い部隊は」
「無理やり入らされたの、さっき」
そう言えば、本番前“守る”だのなんだのと言う話をしていた気がする。
意外に上手いハルの、彩賀さんの物真似に感心しながらも私は演技中の自分を思い返していた。
自分では、全然気付かなかったのだが。
「そうそう、唇もちょっと青いよーグロス塗った方がいいかも」