生徒会長様の、モテる法則
唇…。
グロス…。
まさか、本番中も青かった?
要冬真のやつ…、それに気付いてグロスがついてないのか確認したのかな。
考え始めると、どんどん話が可笑しな方向にエスカレートしていく。
ハルは席を立ってどこかへ消えたと思ったら、グロスを手に持って帰ってくるなり私の目の前に立った。
ヒヤリとした感触が、唇の上を滑っていく。
あんなに至近距離で演技をしていた奴なら、私が寒さに震えていたことは一目瞭然だっただろう。
―…寒そうにしてたから、抱きしめた。とか?
「いや、ないないないない」
思わず繰り返す自問自答。
それが気にならないほど、ハルは真剣に私のグロスを塗っているようだ。
「ちょっと動かないでよー」
最終的には怒られる始末。
まぁ、あいつがそんな優しい奴だとも思えないし。
――…一人になるなよ、絶対にだ
――…暖かいもんでも飲めよ
いやいやいや!
「ないないないない!」
有り得ないものアイツが優しいなんて、だって人の迷惑無視して無理やり生徒会に入れれようなやつだよ。
「できたー!」
――…とうま目当てで媚びうってくる女の子ばっかりでね
ないないないない!
確かに私を選んだのには理由があったし正当性も充分だった。
それでも奴が可笑しな性格なのは変わりない。
とにかくもう考えるのはやめよう。
アイツにかき乱されるのも、何だか腹が立つし。
ハルが満足げにグロスのフタを閉めたので、近くに置いてあった手鏡を取り自分の口元を確認した。
「げ、テラテラ」
唇の枠を飛び出して艶のありすぎる口元が目に映る。
すげーワックスじゃん!
「えろーい!」
「こら!只今エロに敏感だから、エロチックとか敏感だから」
一度スッパリと忘れたはずの唇の感触、それから抱きしめられる大きな胸が脳裏を過ぎり顔が熱くなる。
もう、ホントやだ…。