生徒会長様の、モテる法則


勢いよく扉を引いて、私は教室を飛び出した。


廊下を走ってはいけません。

昔耳にタコが出来るほど言われた言葉。

しかし、命がかかっているのなら何よりも走るべきだ。全力で。


移動教室やトイレに行く生徒で少々賑わった一本道を、掻き分けながら走る。

背後から迫る足音。



振り返るな、振り返ったら負けだ。
昔ドーベルマンに追いかけられた時も何だかんだで逃げられたじゃないか!負けるな私!!


大切なのは実力より根気!!



すれ違う度に振り返る生徒の視線が胸に痛い。
大体にして朝の一件で目立っているのに、これ以上目立つのはマズい気がするが、追い掛けてくるのだから仕方がない。

私を不思議な顔して見送った女生徒は、その後ろから走ってくる要冬真を見つけてキャアキャアと騒ぎ出す。



チッ…ミーハー共が。



心の中で毒づいた。
確かに容姿は整っているのかもしれない。
背も高いかもしれない。カッコいいかもしれない、しかーし!

顔だけではカバー出来ないこともあるのだと、知るべきだ。

というか、もう知ってもいい年頃なのだ。



「“あの暴力女を捕まえたら、俺様が抱擁をプレゼントしてやる”」



「ブハッ!」



突然廊下に響き渡ったあいつの声。
ご丁寧に拡声器まで持ち出して…どこまでアホなんだこいつは!

思わず噴き出して転けそうになったじゃないかどうしてくれる。

馬鹿者が!ナルシストが!独裁者が!

そんなんで周りの女子が乗るとでも…



「ってえぇー!まじか!」



自己陶酔気味の発言を嘲り笑おう振り向くと、追い掛けてくるのは殺気だった女子の集団。


どんだけ影響力あるんだよアイツ!!


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