生徒会長様の、モテる法則
「たかが風邪の見舞いに、なんでこんな大人数なの」
私とハルが教室を出て、待っていたのは久遠寺くん。
三年生の昇降口の前に立っていたのは海ちゃんとユキ君。
結局、生徒会全員そろって校門を出た。
「言い出したのが鈴夏さんだと聞いて驚きましたよ」
一番車道側を歩く久遠寺くんが、わざとらしい口調で此方を見下ろした。
別に言い出したわけじゃない、ちょっとそれっぽい事を口にしただけなのに、何故か幹事扱いだ。
心外である。
「やっぱケーキ買ってこーよ!あたし、シャルド・ネ・クルスのケーキがいい!」
「悠、お前が食べたいだけだろ」
後ろの下級生組は保護者と幼い子供のようだ。
ユキ君は昇降口で顔を合わせた時からやや不機嫌気味で、ケーキについての提案をした海ちゃんを軽く睨み付けている。
彼が、海ちゃんに無理やり連れてこられたのは明らかだった。
「つうか、シャルドネなんちゃらって何?」
「えーリン知らないのー?シャルド・ネ・クルスだよ」
おい、知らないから聞いたのに念を押して言われたって解るわけないだろ。
最近気付いたのだが、ラーメン屋の娘である私と、あの学校に通う金持ち共では少し生活にズレがある。
金銭感覚しかり、ブランドしかり。
私は庶民だ。
と、口を大にして言いたいが何となく気が引ける。
「シャルド・ネ・クルスは、フランスの有名なパティシエが営むケーキ屋ですよ」
「しらん。美味しいの?」
「美味しいよー!おれよく食べるし!」
なんだ、私だけ仲間外れか。
甘いモノが如何にも好きでなさそうなユキ君に話を振ってみたが、どうやら知っている口振りだったし、それ以外のメンツは言わずもがな。
「じゃあ、鈴夏さんと冬真にケーキでも買っていきましょうか」
「おい、私を哀れむな。病人と同じ枠に入れるな」
ハルと海ちゃんの歓声と、ユキ君のため息、それから久遠寺くんの保護者のような生暖かい視線に何故か腹が立った。