生徒会長様の、モテる法則
後ろから前から横から、欲望に満ちた女子共の白くて細い手が伸びてくるのをギリギリの所で避けながら、廊下を駆け抜ける。
男なら、手を捻りつつ走るのだが相手がか弱いお嬢様方となると変に手も出せない。
腰を落として突っ込んで来た女の子の両手をかわし、足を掛けようと滑り込んできた女子の足をジャンプでかわし…、こいつら、目が血走ってやがる!
「あー!前言撤回してやろうか!!」
前方に見えてきたのは大きな窓と階段。
長かった廊下もついに端まで来てしまったようで、このまま上か下に逃げなければならない。
しかし、そうそうにこの鬼ごっこを終わらせなければ…。
選択肢は上か、下か…。
窓!!!
「はーっはっは!あばよ!」
私は両手で素早く窓を開け、サッシに足をかけて広がる青い空いっぱい空気を吸い込む。
運良くここは二階。さらに見える大木から伸びる太い枝。
ついてる!私ついてる!
飛べない距離ではないし、経験上あの太さの枝なら私の体重を充分支えることが可能だ。
一瞬でそこまで計算した私は、考えるより早く足を踏み切っていた。
私の体は、計算されたように校舎の外へ飛び出し大木の方へ向かっていく。
春の暖かい風がスカートを揺らし、私の体を持ち上げてくれているようだ。
窓の中で馬鹿者どもが、騒いでいる。
ざまぁみろ!もう追い掛けられないだろう!
絶妙なタイミングだった。
ゴールである大木の枝に左足を着地させた瞬間、真新しい上履きの滑り止めというのは本来この様な時に機能するはずではないかと。
「でぇっ!」
見事、足を滑らせて背中から宙に投げ出された。
いやぁぁぁ!
頭から落ちて、中身が飛び出すビジョンが頭をよぎる。
春の妖精達助けて!
「って馬鹿か私は!」