生徒会長様の、モテる法則
「何故盗んだかと聞かれた泥棒はこう言うだろう“そこに、塀があったから”と…」
「かぁっこいー!泥棒尊敬!」
「アホですか貴方達」
私の横で、久遠寺くんがボソッと突っ込んだのが聞こえた。
壮大なロマンが、その一言で台無しだ。
「久遠寺くん、君はわかってないなぁ、わかってないよ。ロマンと言うのはだね、そもそも…」
「着きましたよ」
無視かい!!
久遠寺くんが眼鏡を人差し指で上げて立ち止まったので、私は反論するのをやめて、彼の視線を追うように振り返った。
「…、日本大使館?」
「先輩、日本大使館の意味解ってます?」
後ろで仕方なしに突っ込んだユキ君を振り返ると、もう諦めたような半笑いで此方を見ている。
私が日本大使館を知らない前提で質問しているのは間違いなく、その表情は肩をすくめる外人のようだ。
髪の毛の色が、金色だから余計。
「ユキ君、私が日本大使館を知らないと思ってる?」
「はい」
「…」
「ほら、やっぱり。日本大使館は日本にないですからね」
私は比喩的表現として“日本大使館”と言っただけで、別に日本大使館が日本にある施設だなんて…、ちょっとは思っていたけど、何もそんな刺すような視線を送らなくてもいいじゃないか。
要冬真の家…、いや、屋敷?別荘?
とにかく、私の想像していた住居像が脆くも崩れさるほどの大きさだ。
黒く塗られた鉄格子の門は、まるで巨人の為に誂えたのではないかと言うほどのサイズだし、その先に見える庭は、一面の芝生に舗装された道が真っ直ぐ本館に繋がっている。
季節柄咲くであろう色々な植物。
綺麗に整備された噴水。
白く輝いている。
金白第一高校の噴水、梶谷学園の噴水、そして要家の噴水が頭を過ぎった。
「噴水の色は緑がデフォルトだと思っていたよ」
「先輩の中の噴水像が逆に謎なんですけど」
「みんなー!あたしについてきてねー」
海ちゃんを先頭に、私達は要家の家の門をくぐった。