生徒会長様の、モテる法則



風邪…?


そうだ!
私ってばこいつに風邪移してたんだ!

改めてヤツの方をマジマジと見ると、少し赤らんだ頬と鼻声気味の掠れた声、疑っていた訳ではないが正真正銘風邪を引いた人間の特徴である。



「あの、私のせいで…風邪、すいません」



意を決して、前に出て、小さく呟いた。

なんとなく目線を合わせづらくてあちこちに泳いでしまう。


だって、気まずいし。






「まぁ、細菌もお前が馬鹿すぎて天才的な俺様に移ったんだろうな」





なんという、皮肉な発言。

広い、それこそ三人は裕に横になれそうなキングサイズのベッドの上のヤツは様になっている。
長い前髪の奥の綺麗な瞳が楽しそうに笑った。


「馬鹿すぎて細菌も逃げ出したんだな」


ころす!



「てめぇの寿命が尽きる前に私が終わらせてくれるわぁぁ!神に代わって!デスノートかもーん!」


「うわ!リン暴れないでよ!」


すかさず駆け寄ったハルに、羽交い締めにされる。
あんたは私の飼育係か!

どんだけ素早い反応見せてんの君!


その様子を見ていた要冬真は、一度鼻で笑ってから「動物園のサルだな」と言ったので、近くにあった高そうな花瓶でも投げつけてやろうと手を伸ばした。


「失礼します」


しかしタイミングを図ったかのように扉が開き、慌てて手を下ろす。

執事と思わしき若い男が、手押しカートを押しながら入ってきた。

その上には人数分の皿。
丸く太ったポットには、綺麗な花柄があしらってあり、まるでドラマや漫画のようだ。



その振る舞いは、正に紳士。


アニメのような美しさ。


執事の名前はセバスチャンに違いない。

もしくは氷嶋ヒロ。




「ご苦労だったな、琴理」



違った…!
セバスチャンじゃない!



コトリさんかぁ…。
…、小鳥?



動きづらそうな執事服はドラマでよく見るスーツ。
真ん中で分かれた前髪が緩く弧を描いて耳の横まで伸びている。

少し釣り目気味だが、元々目が大きい事を手伝って怖い印象はない。





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