生徒会長様の、モテる法則
綺麗な人だ。
ケーキを取り出す様も、紅茶を注ぐ様も、何でもかんでもスマートにやりこなす彼の指先に見とれていると、ふと灰色がかっているのに澄んだ二つの目がカチリと私を捉えた。
コトリさんは焦る様子もなく、かと言って冷たくあしらう訳でもなく、ニコリと目を細めて笑って見せる。
素敵な笑顔!!
「そちらのお嬢様は、砂糖をお幾つお使いになりますか?」
囀【サエズ】るような美しい声!!
さすがコトリ!!
名字だか名前だか知らないけど、そう言うのって人格に反映するものなのね!
「砂糖は一つでお願いします」
感激しつつも、しっかり答える私。
少々現金であることは、自分でも分かっているつもりだ。
やがてベッドの近くに用意された、傷一つないテーブルに適度な湯気の立つティーカップが置かれる。
カップも、高そうだ。
隣に並ぶ複雑な形の1000円ケーキに手を付けようとフォークを掴んだ所で、フと、自分のフルネームが頭をよぎった。
あれ、その理屈で行くと私…仁王像?
「…」
いやいやいや。
流石に仁王像みたいに、あんな険しい顔じゃないもん。
「リン、なんでケーキ睨み付けてんの?仁王像みたい」
ハルが最悪のタイミングで、今この時この瞬間最も言ってはいけない事を口にした。
彼の目の前にあったケーキの天辺に乗っているイチゴを取り上げて口に放り込んでやると、とたんに悲鳴が木霊する。
「あー!おれのイチゴ返してよー!」
「やだね!設置したばかりの地雷を早速踏む奴にイチゴはあげられないね!」
二人でヤンヤヤンヤと言い合いをしていると、ベッドの方から何やら冷凍ビーム的な冷徹の視線を感じ取った。
「てめぇらホコリたてんなよ、ウルセェ」
目つきもさることながら、口調や声色も絶対零度の冷ややかさ。
怖い!今までで一番怒ってらっしゃる!
私とハルがその気迫に押されどもりながらも謝ると、クスッと小さな笑い声が聞こえた。
「お二人とも、ご兄弟のようですね」