生徒会長様の、モテる法則
「…?す、好きな人…?」
「た、例えば…クゥちゃんとか」
私が目に見えて戸惑った為、海ちゃんは慌ててまくし立てるようにそう付け加えた。
「…、エセ紳士?」
「じゃあハルちゃん先輩」
「バカ丸出し」
「トーマは?」
「ナルシスト野郎…とか」
出て来るのは、生徒会の男ばかり。
改めて彼らの事について考えてみると、なるほど、変な奴しか居ないじゃん。
やだやだ…。
「じゃあ」
海ちゃんは呟いた。
言葉とは裏腹に、顔はほんのり赤く苦しそうな表情でこちらを見ている。
普段寝てばかりの、ボケっとした彼女からは考えられない顔付きは、何故かドキリと胸が飛び上がるほど色っぽかった。
「…慧、は?」
目を逸らして、苦しい喉元から絞り出すように海ちゃんは彼の名前を口にした。
慧…?
「あぁ…、ユキ君か。一番マトモだとは思うけ…」
ダーツに向かって真正面に立つユキ君を見てから、彼女に視線を戻せば、涙に溢れた大きな目元がこちらを哀しげに覗いていた。
「ど…!」
「ふぇ…」
「ああああ、ごめんごめん、ユキ君は人を全力で見下してるから、無理!」
慌てて両手を振り回し、膝の上に乗ったままの頭を優しく撫で回した。
「…、ほんと?」
「ほんと」
目尻に溜まった涙を落としてやると、海ちゃんは眉を下げたままフニャリと笑う。
「慧ね、初めてあたしと、きちんと話してくれた人なの」
海ちゃんは、横に寝直してガラスであしらった高そうな椅子に座ったユキ君を見た。
すきなひと、海ちゃんのすきなひとって…まさか、ユキ君?!
「その時からずっと、好きなの。でも、ライバルがリンちゃん先輩だったら、適わないし…」
適わない、ですと!?
栗色の柔らかウェーブに白い肌、大きな瞳に小さい唇。
私が勝ったらある意味詐欺である。