生徒会長様の、モテる法則


意外と不機嫌ではなさそうなヤツと一緒に屋上へ出ると、梅雨の時期にしては珍しく晴れ渡った空が私達を迎えた。


とりあえず、何から話そうか…いや、単刀直入の方がいいか、うむ…。


つうか単刀直入って、“あんたのスキナヒトって海ちゃんかい?”でいいのかな。

それとも、軽いジャブとして“要くんてー、スキナヒトとかいるのぉ?”か?


あわわわ!“要くん”とか…、キモイ!!



私があれやこれやと考えていると、要冬真は目の前を通り過ぎてフェンスに寄りかかった。


「で、なんだよ。告白でもしようってか」


ヤツはニヤリと笑い、落ち着いた様子で私をじっと見つめている。
そんなわけない事を、分かっている表情だ。



「絶対言うと思った」



「意外だな、跳び蹴りでもすると思ったのに」




湿っぽい風がヤツの長めの前髪を攫っていく。
目を丸くした要冬真は、私に背を向けた。

それから何となく流れていたヤツの視線が突然止まったので、無性にその先が気になって同じようにフェンスに駆け寄ると、目に入ったのはすっかり葉桜になった中庭の大木。


あれは、彩賀さんとの決闘場所にあった桜の木だ。



ちょっと懐かしい。


あの頃はまだ、散りかけていたと言えど枝先はピンク色に染まっていたが、今は何事もなかったかのように周囲の木々と紛れてしまっている。

葉が一枚風に乗って流れたのでそれを追いかけると、葉は地面ではなくホッソリとした誰かの腰の上に落ち着いた。


木の根元に、誰かが横になっている。





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