生徒会長様の、モテる法則
「誰か寝てる」


「海だな」


「え!海ちゃんすか」


「あいつ、また性懲りもなく…」



あ。

まただ。


発した言葉とは裏腹に、零れるような笑顔。
話さなくなった要冬真を見上げたまま、私は固まってしまった。

なんて笑い方するんだろう、この人は。


見とれてしまうような、その表情は。




――…やっぱり、好きなんだ




「おい、俺様が美しいからって見とれるな」


「見とれてない!」



嘘だけど。

「で。用件はなんだよ」




意地の悪く、海ちゃんを見た後だからか機嫌の良い目元が私を捕らえた、

用件とか、この状況で聞きにくい!

めっさ聞きにくい!

ど、どうしよう…、ええーっと!



「ううう、海ちゃんって、スキナヒトとか…居るのかな!?」



「は?」



しまった!地雷踏んだっぽい!?


本来の聞きたかった事は確かめるまでもなかったわけで、突然の切り返しに慌て微妙に違った質問をふっかけてみたが、その瞬間、空気が一気に氷点下まで落ち込んだのを肌で感じた。




――…梅雨入りなのに…、寒い!



先ほどの笑顔から一変、ヤツは眉を潜め人を地面に落としそうな形相でこちらを見下ろしている。



「い、いや…別に変な意味ではなく…彼女可愛いから、モテるんじゃないかなぁ、なんて」




私がしどろもどろに言葉を返すと、ヤツはため息をついて緑色の桜を見下ろした。



「あんなん、見てりゃわかんだろ」






桜を眺めるヤツの横顔は、何を考えているか判らない複雑な表情をしていた。
長い睫毛は簾のように頬に影をつくり、風で前髪がユルリと流れて形のよい額が見え隠れする。



呆れているようにも見えるが、その表情は心なしか苦しげだ。



憂いの表情…、というやつだろうか。



「…」




まさか…!




この俺様野郎!!
世間の女が俺に惚れてるぜ、みたいな態度なのに!





健気な…、片想い…!?





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