生徒会長様の、モテる法則
“俺はあいつを好きだけど、あいつは俺に見向きもしない…、ララバイ”
脳内の要冬真が、悩ましげに呟いた。
健気…!
なんて健気なの要冬真!
最近のケータイ小説みたいじゃないの!
「なんだその憐れむような目は」
全てを悟りつつも健気に海ちゃんを思い続ける要冬真。
不覚にも、泣きそうになってしまった。
なんて、なんて一途なの。
「苦しかろう辛かろう、私はアンタの人間らしさを垣間見て嬉しいよ」
不審そうな顔で、私を見下ろすヤツの背中を数回叩いて励ましてやると、益々眉間にシワを寄せる。
そんな威嚇の表情も、全てを知ってしまった私からしてみたら爪のない猫のようなもの。
いいんだよ、いいんだよ引っ掻いても。
優しく受け止めてあげよう。
抱きしめるとかは無理だけど。
なんか、悲しんでたりしたら少しくらい優しく出来そうだし。
――…でも、そういう時、なんて声をかけるの?
振り向かない人間を想う気持ちってどんなんだろう。
死んだ人の影を追いかける感じ?
親父は、死んだ母さんを想い続けているが、それは相手が見えないだけマシなのだろうか。
それとも、手に入らなくても生きている方がいい?
“じゃあ、お前が生まれなかったら鈴実さん生きてたんだな、可哀想、夏樹さん”
「―…おい、どうした?」
滲んだ視界が突然クリアになって、引き戻された意識は要冬真の声を拾い上げた。
神妙な顔で私を見る奴の目は、何故だか優しい。
――…、スキナヒトが誰かのせいで死んだら、その人を恨む?
その暖かさに負けて、一瞬そう、喉の奥で口走っていた。
慌て飲み込んだその言葉は、重く苦い。
「いや、なんでもない!早く海ちゃん迎えにいってやってよ!」
納得が行かない顔をしたままの要冬真を、私は屋上から急かすように追い出した。