生徒会長様の、モテる法則


わ、忘れてたっす!!


アナタの存在!!

なんだろう、お前俺の好きな人知ってて協力しない気か、ってう感じ??

すいません!!



そういうわけじゃなくてただ海ちゃんが笑ってくれたらなって思っただけなんです!



恐る恐る振り返ると、要冬真は私から視線を外して窓の外を顎で指した。



「お前、海がそこに居るって知ってて教えなかっただろ」



私はソファーから立ち上がり窓に両手を付くと、一面に広がる中庭から見える一本の大木の根元に栗毛が揺れている。


「まぁ、あそこに居るだろうとは思ってたけど」



大体あんただって教えなかったじゃないか、と私が見下ろすと椅子に座ったままヤツはニヤリと笑って、持っていた本を静かに机の上へ下ろした。



「いつもあそこから動かないからな。言わなくてもいずれ見つかるだろ」



要冬真は腰を上げ、私の隣に立つと楽しそうに喉を鳴らす。
他人事のように笑うヤツは、思ったより元気そうだ。



「でも慧のあの感じだと、完全に脈なしだな」



「うわ!人の不幸を笑ってる!最悪だ!」



「でもきっと、慧にとっても海は大きな存在だと思うぜ」



ユキ君が、本能のままたどり着いたのはやっぱり中庭の桜の木だった。

はっきりと見える彼の影は、心なしか早足で海ちゃんの元へ向かっている。



「なんだかんだで気にしてるからな。海のこと」


海ちゃんがユキ君に気付き、飛び上がるようにして起きあがったのが見えた。

なんか、嬉しそう。




「あと秋斗と春だな」


要冬真は、二人から目を逸らすように窓から背を向けて椅子に座り直した。






――…やっぱり、あの光景を見るのは心苦しいのかな




ツキンと、胸に何かが刺さる。
ジワジワ体内に広がって、少し息苦しい。


「みんな集めてどうすんの?」

「さっき言っただろ?文化祭についての話し合いだ」



「ふうん」


私はソファーに戻り、シクシク痛む胸元を軽く押さえた。

やっぱり、つつかれるような痛み。


「…ん?」



私なんで、胸が痛いの?





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