溺れる唇にキスを



毎日何人もの女の子と
愛し合って、愛を誓って。


あたしを裏切る。


拓也にとって「好き」は挨拶。

キスは社交辞令。

愛を囁くのは…暇つぶし。

そんなの、嫌って言うくらい知ってる。


「知ってるよ。大丈夫」

「汐音は…寂しくないの?」


アーモンド形の
大きな瞳に見つめられて、
目をそらしてしまう。


寂しいよ、苦しいよ。

でもね、拓也に言うだけ無駄なの。

何度も他の子と別れてって言った。

その度に面倒くさそうな顔をされて、
それすらもつらいの。

いつか冷めて
捨てられるんじゃないかって、
ビクビク怯えてるの。


「汐音の寂しさ、
俺が埋めてあげられない?」


上目使いに見つめる颯に、
目を伏せるあたし。

颯に、埋めてもらおうなんて
都合のいいことは思わない。


好きでもないのに
厚かましすぎる。


それに拓也と同じような人に、
なってしまいたくない。

恋愛の上で好きになるのは、
1人で十分なんだ。


沢山いたらそれはきっと
本当の愛じゃない。


異性への愛は…
きっと分けるものじゃない。


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