溺れる唇にキスを





皆が目を向ける颯と、
彼氏の浮気現場を見ても
今は何一つ言えないで、
怯えることしかできないあたし。


拓也に言わないことで、
自分を守ろうとする。

そんなズルイことしか
考えてないあたしは、
最低な奴だよ…。



「…そんなんじゃ、ダメだよ。
あたし、そんな理由で颯に
傍にいられたら困る」


颯のためにも、
あたしのためにも。


きっと今の状況は
良い事じゃないんだよ…。


お願い、わかって。

今ならまだ、何も
なかったことにできるから。


気の迷いだったんだって、
自分の中で正当化できるから。


「汐音が迷惑に思ってたって
俺が納得いかない。
だって俺、汐音の事が
好きになったから」


「好き」の言葉に、息が詰まる。

ドキドキするのに、颯の気持ちに
応えるなんてできないの。


颯は、あたしのズルさも
ダメなところも知らないから。


まだ学校に馴染んでないから、
一緒にいるあたしが好きだって、
勘違いしてるんだよ。


だから、そんな簡単に
好きだなんて…言わないで。



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