溺れる唇にキスを





「颯くん、来なくなったね」


楽しくないなって口を尖らせて、
あたしの腕を肘で小突いた
田所(たどころ)ちゃんから
目を逸らしてしまう。


わかってる、あたしのせいだって。

でもこうするしか方法がなかったの。


颯が可哀そうだ、
…あたしに振り回されてるみたいで。


「汐音、仲直り
するつもりないの?」


はあっとため息混じりの声に
体がビクリと震えた。


仲直りなんて、できるわけがない。

一方的に拒否して、一方的に
逃げてきて。

そんなわけの分からない奴に
構ってる暇なんて、颯には
ないはずだし。


はあ…とため息を吐き出すと、
見てらんないっと
田所ちゃんの声が聞こえて。


「うっわ!ちょっとっ!?」


グッとあたしの手を引いて走り出す
田所ちゃんに、驚きなんて通り越して
両足が走りについていけなくなりそう。


なに!?あたし、なにか
走らなきゃいけないようなことした?


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