溺れる唇にキスを
ズルイって…
だって、颯は……。
「っ…乗れる」
そう言うこと、かな?
颯に好きって言われたことを
指してるんだってやっと気がついて
少し顔が熱くなる。
そっか、あたし…。
あの時の颯のことを思い出すと、
ドキドキする。
あたしを見る、真剣な眼差しも。
強い力も、何もかも。
「颯は、先輩が思ってる以上に
先輩のこと思ってるんすよ?
教室でもいつも
『今日は汐音と話したー』とか
『今日、汐音が悲しそうな顔してた。
なんかショック』とか。
それこそウゼえくらいに」
「う、そだあ…」
「嘘じゃないっすよ。
…これ、アイツに
言わないで下さいよ?
なんか入学式の後、
先輩が彼氏の浮気現場見て
泣いてんの見て、どうかしたいって
思ったらしいんですよね」
それ、誰も知らないはずなのに…。
確かに入学式に2年生は
出席しなきゃいけなくて。
でも出てるはずの拓也がいなくて、
探しに行って他の子と
キスしてるのを見て。
中庭まで走って、泣いた…。
誰にも見られてなかったはずなのに。