溺れる唇にキスを





「じゃあ俺、
下で待ってますから。
あ…やっぱりいない方が
いいっすよね?」


3階建てで、レンガ造りの
マンションの前に着くと
要くんは自転車に乗ったまま
わたわたと慌て始めて。


…っそんなに気を使って
くれなくていいのに。



思わず笑えてきて、
下で待ってて?
1人で学校に帰るなんて
寂しいよ、って言うと
そうっすか、待ってます、って
笑って言ってくれた要くんに
ありがとうって言って。



「颯の部屋、
3階の302号室っすよ」


「うん。行って来る」


目の前にある階段を
もう一度見て、要くんに
連れて行ってもらった
コンビニの袋を提げて
それを登る。


ねえ颯、突然来たあたしに
どんな顔をする?


……どんな顔を、するの?


カンカンっと上る度に音を立てる
階段に、ドキンドキンと鳴る
心臓の音は次第に大きくなる。


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