溺れる唇にキスを




頭の中がボーっとしてきて、
何も考えられなくなる。



触れた部分からする、
微かな甘いチョコレートの味に
頭のすべてが真っ白になっていく。



「俺、颯(はやて)。
よろしくね、汐音」



触れた唇に、くぎづけになる。

高鳴る心臓の音を
止めることができない。


「さいってい!」


口を衝いて出た言葉に、
走り出したあたしの足。


キス、した。
知らない人と。


拓也と同じだ……。


溢れた涙が、罪悪感に染まっていく。


だけど、同じくらいトキメク胸の音。


チグハグな感情、入り混じる罪悪感。



「…っどうしろって言うのよ……」



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