溺れる唇にキスを
ズルイ、ズルすぎる。
そんな顔されたら…
ダメなんて言えない。
お願いだからそんな目、
しないでよ。
息ができなくなる。
心臓を鷲掴みされたような
そんな気がしてしょうがない。
「颯くん、汐音のどこが
一番好きなのー?」
ワルノリしたクラスメートは、
ケラケラと笑いながら
颯に問いかける。
「全部。存在全部が俺にとって
好きの枠にハマってんの」
口元を少し上げて、
目を細めて笑う颯に。
ドキンと大きな音を
たてたあたしの心。
あたしには拓也がいるのに。
なんでこんなにも苦しくなるのだろう。
どうして…。
「汐音、
ちょっと俺に付き合ってよ」
手に絡む、颯の体温。
ほんのり暖かい、颯の手のひら。