櫻。
襖の向こうで、どたどたと急ぐ足音。
なんだか騒がしい。
静かになったと思ったら、向こうから声がした。
「殿、殿はいますか?」
慌てている様子。

「なんじゃあ。」
源十狼はすでに酔いが回っていた。
「失礼します。」
男は襖を開けた。
名は、山中 信太郎。
汗をかき、息もあがっていた。

「た、大変です!享楽様が……」
「またか!あのバカ息子がっ!」
話しの途中で感付いたのか、源十狼は怒鳴った。
もしかしたら、いつもこんな感じなのか。

「殿の大事にしている櫻号で、庭を暴れております。」
「な、なんだと!」
源十狼はすぐに庭に向かった。
櫻号とは、源十狼が大事にしている馬のこと。


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