それでもわたしは生きている
もうひとつの家族
ごめんね、リュウ
弟が小学校に上がる時、父は弟を施設から引き取った。
もしかしたら、そのまま施設に居たほうが良かったのかもしれない。
私は小学5年生の時に1度だけ、父と弟の住むアパートへ遊びに行った。
小綺麗で荷物の少ない男所帯だった。
感じのいいオバサンが出迎えてくれた。
オバサンはせっせと鍋の用意をしてくれている。
お父さんの彼女かな?
「お姉ちゃん!見て見て!」
振り返ると
「ゲッ!!」
口からブクブクと泡を出して、小学2年になる弟が笑って立っている。
歯磨き粉を食べたのだ…
私は
「アホか!」
と言って冷たくあしらった。
もしタイムマシンがあったなら、この時に戻って、必死で自分の存在をアピールする弟を母の代わりに抱き締めてあげたい。
もしタイムマシンがあったなら、あの別れの瞬間に戻って
「弟も一緒にお母さんの所へ連れて行ってあげなさい」
と私に言いたい。
ごめんね…リュウ…
オバサンは、一生懸命私に構ってくれた。
お腹もふくれ、鍋の熱気でボーッとし始めた私の前で、ビールでほろ酔いになったオバサンは父の膝に絡み付き