悪魔は甘く微笑んで【恋人は魔王様 番外編◇ドリーム小説】
「なかなかいい線、いってるんじゃない?」

さらり、と。柔らかい声で、人のピアノ演奏を勝手に評価する。

ぎょっとした私に向けるのは、人懐っこい笑顔。
ジャニーズ事務所のタレントの中に居るような気さえする甘いマスクに、私の無防備な心臓は踊りだしていた。

だって、普通。
3階の音楽室に、窓の外から息を呑むようなイケメンが唐突に入ってくるなんて思えないじゃない?

しかも。
人が必死に弾いている曲に対して、上から目線でモノを言ってくる。

……というのに、全く腹が立たない。

これって、どういうこと?

あまりにも勝手が違いすぎて、なんて言ったらいいのか検討もつかない。
彼は、うっとりとグランドピアノにもたれかかる。

「ねぇ、もう一回弾いてみなよ。その、Diabolic Suggesiton」

「……え?」

もう一回弾いてみなよ、の後が聞き取れなくて顔をあげる。

「あれ?日本語ではそうは言わないの?」

彼は、無邪気に首を傾げた。その仕草は、人懐っこい子犬を髣髴とさせる可愛らしさがある。
いわれて見れば、日本語は訛っているようにも思えた。

外国人なのかしら。

ふわりとした茶色い髪に、透き通るような白い肌。
紅い唇に、柔らかいブラウンの瞳。

でも、どこの国の人なのか見当もつかない。

日本人だといわれれば、信じられる程度の様相なのだから。



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