悪魔は甘く微笑んで【恋人は魔王様 番外編◇ドリーム小説】
「本当に、潤くんはキヨミのピアノを聴くのが好きよね」

夕食を食べながら、にこりと笑って母親が言う。
私は思わず動きを止めてしまう。

ジュノは、慣れた調子で箸を動かし、

「ええ、キヨミちゃんのピアノの音色は特別ですから」

なんて、しれっと言葉を返して両親を喜ばせている。

いやいやいや。

落ち着いて、お父さん、お母さん!

これは、悪魔で、人じゃないの。
何、その、架空の記憶!

「私、覚えてないわ」

あえて、そんな風に言ってみる。
なのに、お母さんは困った様子もなくにこりと笑う。

「そうなの?
キヨミはまだ、小さかったから仕方が無いわねぇ」

……は?

私は眩暈を覚えた。

ジュノなんて、しれっと
「僕は覚えているのに、キヨミさんが忘れたなんて、残念です」
なんて、涼しい声で言う。

ああ、やっぱり。
見てくれは素晴らしく美しいけれど、彼は、悪魔なんだなと。

私はどこかで納得してしまっていた。
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