悪魔は甘く微笑んで【恋人は魔王様 番外編◇ドリーム小説】
「ねぇ、あの人、誰なのよ?」

そっと小声で聞いてみる。
本当に、小さな声で。

それなのに。
目の前の黒づくめの美青年はピタっと立ち止まった。

振り向きざま、黒曜石を思わせる瞳が冷たい光を放つ。

「キヨミ。
 聞きたいことがあるなら、直接俺に聞いたらどうだ?」

上から目線、なんて言葉が甘っちょろく思えるくらいの高圧的な物言いにくらりとした眩暈を覚える。

「……」

何から聞いたら良いのか。
どんな口調で尋ねたら良いのか。

頭が真っ白になって言葉が出てこない。

「どうして、ついてくるんですか?」

搾り出した言葉は、自分でも見当外れな一言だった。
しかも、何故か勝手に丁寧語をチョイスしているし。

ふん、と。鼻先で笑い飛ばされる。

「俺は誰の後にもついてなぞ行かぬ」

……そうでしょうとも。

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