悪魔は甘く微笑んで【恋人は魔王様 番外編◇ドリーム小説】
レストランに着くと、いつのまにか黒づくめの男は消えていた。

「……あれ、あの方どちらに?」

潤に聞くと、さっきまでの緊張など何処吹く風、と言わんばかりの満面の笑みを浮かべて、

「気にしなくていいよ。
 いなくなったってことは、ここでの用は終わったってことなんだからさ」

なんて、軽い口調で言う。

「そ、そうなの?」

「そうそう。なんだか久々に緊張したからお腹すいちゃったー。
 大田さん、もう、来てるかな?」

なんて言いながら、潤が軽やかな足取りでレストランに入っていく。

その変わり身の極端さを目の当たりにすると、先ほどの彼はよっぽど苦手な人物なのね、と。
感じずには居られない。

志保さんと合流して、三人で昼食を楽しんで、潤にしばしの別れを告げると私たちはお芝居を楽しむことにした。

滅多にミュージカルなんて見ない私だけれど、志保さんが誘ってくれる舞台はいつだって楽しいものばかり。

今回も、主役の氷川亮総はもちろんのこと、端役の役者に至るまで完璧な出来、ストーリーもありきたりとは言え秀逸なものだった。
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