悪魔は甘く微笑んで【恋人は魔王様 番外編◇ドリーム小説】
しかし、問題は観客にあった。

氷川さんが出てくるだけで、場違いな歓声があがる。

「亮様ーっ」

今までなら、絶対に人が叫ばないようなところでまで、呼び声が上がっていた。

テレビによる人気っていうのは、こういう風に出てくるのかー、と。
私は感心する。

こっそり志保さんを盗み見ると、何かに耐えるようにぎゅっと眉間に皺を寄せていた。


「亮様ーっ きゃぁああああっ」

カーテンコールが3度終わっても、歓声がまだ鳴り止まない。
発作でもおきたのかと思うような、激しい悲鳴があちらこちらから上がっている。


「他の役者さんに失礼だと思わない?」

志保さんは呆れた声でそう言うと、私の手を引っ張る。

「先に行きましょう」


出ましょう、ではなくて。
行きましょう、と。

志保さんは確かにそう言った。


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