悪魔は甘く微笑んで【恋人は魔王様 番外編◇ドリーム小説】
熱狂的な人ごみからようやく開放される。
もっとも、隣に居る志保さんはまだ熱に浮かされているようで、先ほど見たばかりの舞台の内容を語るのに熱心になっている。
その眼差しは夢見る少女のようにとろけ、やたらと早口だ。

信号待ちをしているときでさえ、その様子は変わらない。

本当に、好きなんだなーと、感心したその時。


「きゃああっ」

短い悲鳴があがり、その声に気づいたときにはもう、志保さんは私の視界から消えていた。

キキーっと、急ブレーキを踏む車の音。
その後ろに追突した車の音。

何があったのかと、目をやるけれども、そこには何もなかった。
急ブレーキを踏んだ、運転手の男性が瞬きを繰り返している。


そして。

隣にいて熱弁をふるっていたはずの志保さんは、どこにも居なくなっていた。
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