悪魔は甘く微笑んで【恋人は魔王様 番外編◇ドリーム小説】
魔王がリリーと逢う前に、リリーに逢ってその願望を聞き出すのはニバスの仕事だ。

目を丸くしているニバスに向かって、ご機嫌な魔王はクツクツと喉を鳴らして笑う。

「そう、世界の東の果てにあるらしいぞ。
そこの国の者は黄色い肌と黒い髪を持っている」

「それはそれは」

今までニバスが見てきた人間は、褐色の肌か白い肌。
その混血も見たことはある。

が、黄色い肌を持つ人間とはどのようなものなのか。

今のニバスには、想像出来ない。
黄色い生物といえば、かろうじてキリンのことが頭を過ぎる程度だ。

「もっとも、まだ、可能性の一つに過ぎないのだがな。
リリーがやってくるのは5年以上後のことになるらしい」

それでも、魔界時間に換算すればもうじき、だ。

「一足先に偵察に言ってきても宜しいですか?」

ニバスは丁寧に切り出した。

「もちろん。
そうそう。かの国の者の多くは、いまだに英語にも不慣れだということだから、少しは勉強してから言ったほうがいい。
なにせ、ラテン系の言葉とは文法からしてまるで違う。
文字もアルファベットではない。
たまには新しいことを学ぶのも楽しいものだ」

さっき聞いたのに、もうそこまで調べ上げたとは。
あるいは魔王にとっては既知の国だったのだろうか。
ニバスは、魔王の博識度合いに舌を巻く。

ネオ・アスモデウスは、魔界に棲むもののなかで、一番人間界に精通している悪魔と言えそうだった。


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