悪魔は甘く微笑んで【恋人は魔王様 番外編◇ドリーム小説】
退屈な世界史の授業中、だったのだけれど。
私は思わず目が覚めた。

潤が座っているべき席には、誰も居なかったのだ。
息が詰まる。
体温が上がる。


……まさか、そんなっ。


先生の声しか響いていない教室の中で、私は突然立ち上がる。
がたん、と。
椅子が板の上を滑る音が、やかましく響いてクラスの視線を浴びたけれど、そんなこと気にしている場合じゃない。

「すみません、気分が悪いので保健室に行ってきます」

返事も聞かずに教室から飛び出した。


潤、潤……。

頭に浮かぶのは、桜の舞い散る中で無邪気に微笑む彼の顔だ。

挨拶もなしに、魔界に帰ったなんて言わないよね?
そんなの、嫌なんだけど。

私、本当にあなたのこと――




大好きなんだから。
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