悪魔は甘く微笑んで【恋人は魔王様 番外編◇ドリーム小説】
髪を靡かせて、走る。

心当たりなんて、あるわけない。
魔界がどこにあるか、知るはずも無い。


だから。
私が最初に選んだのは、初めて彼に逢った場所。


第二音楽室。

幸い、この時間そこで授業はなかったみたいで。

その部屋はただがらんと、だだっ広い。
西日が差し込む部屋なので、午前中はこう、どことなく暗かった。

授業中なら蛍光灯をつける時間帯。


しん、とした部屋。

ねぇ、あの頃よりは随分と上手くなった「悪魔的暗示」を奏でたら。
もう一度ここに来てくれる?


今朝は普通に一緒に笑いながら、手を繋いで家を出たのに。


……ねぇ。

潤。

あの時あったかかった右手。
今はこんなに冷たく感じるよ――?
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