悪魔は甘く微笑んで【恋人は魔王様 番外編◇ドリーム小説】
「……潤?」

振り向かなくても、相手が誰か簡単に分かるなんて思わなかった。
鼻腔をくすぐる甘い匂いや、さらりと触れる髪の感触。
何よりも抱きしめられ方とその体温で、それが誰だかわかってしまう。

これって、本当に凄いんじゃないかしら。

「こんなところで何してるの?」

耳に入ってくるのは、零れるような笑いを含んだ柔らかい声。

「散歩に決まってるじゃないっ」

抑えた声で、それでも目一杯強気で言うのは最大限の照れ隠し。

「じゃ、もっといいところに連れて行ってあげる。
 目、閉じて」

言われたとおりに目を閉じる。

「いい?」

こくりと頷いた。


パチン、と。
指を鳴らす音がする。


直後。
ふわりと身体が浮いた、気がした。
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