悪魔は甘く微笑んで【恋人は魔王様 番外編◇ドリーム小説】
2.悪魔的暗示
■悪魔的暗示(by.Prokofiev)

人間界 日本
アナタが通う 高校の教室――


「ねぇ、きよみさん、どう思う?」

志保さんが、やたらと真剣な表情で私に語りかけてくる。

いや、どう思うって言われても。
なんて応えたら良いのか分からずに、私は思わず視線を逸らす。

窓の外。
校庭の桜が我が世の春を誇っていた。
今日も天気がいいわぁ。

新入生の心も弾む4月半ば。
もっとも、高校二年生になった私にとっては、さして心の弾む季節なんかじゃない。

それでも。
こうも天気がいいと少しは――

あれ?

私は思わず一点に意識を集中する。

今、空から何かが降って来なかった?
黒い、何かが――

「だから、私に子供が生まれたら絶対に早乙女百合亜って名前にしようと思ってるの。
ねぇ。聞いてる?」

志保さんが、わざわざさっきの話を蒸し返してきたので私は仕方なく彼女を見た。
そういえば、田沢先生も志保さんのこと可愛いなんて言ってたっけ。

余計なことを思い出して、ちくりと胸が痛む。

そんな私の心境の変化に気づくよしもない、志保さんの瞳は、熱に浮かされた子供か、もしくは少女マンガの主人公のごとくキラキラと輝いている。

架空の子供の名前を考えるのに、そこまで夢中になれるのも特技だと思うわよ、ある意味。

私はため息を飲み込んでにこりと微笑んだ。



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