悪魔は甘く微笑んで【恋人は魔王様 番外編◇ドリーム小説】
ゆっくり、潤と唇が重なる。

柔らかい髪がさらりと頬に触れるのすら気持ち良いと思ってしまう。
私は特等席で太陽を味わいながらまどろむ子猫のように、瞳を細めた。

ずっと、このまま一緒に居られたらいいのに。

「ずっと、このまま一緒に居られたらいいのに」

……え?

自分の中の心の声と、ほとんど同時に潤の声が響いてきて、私は思わず目を丸くした。

「でも、僕は年を取らないんだ。
 きっと、いつかキヨミを悲しませることになる」

そう言って至近距離で見つめる茶色い瞳は、まるで樹木から集めてきたような蜜色に染まって甘く揺れていた。

私は、ギュンとする心臓の痛みに歯を食いしばって耐える。


そうして。
心からの笑顔を浮かべた。

「いいよ。
 人間同士の恋愛だって、その結末は大抵アンハッピーエンドなんだから。
 うん。
 私は、結末より過程を楽しみたいの」

大抵は、どちらかが振られて終わる。
あるいは、仮に一生両想いで居られたとしても。

どちらかが、先に逝ってしまう。


そういうことに、なっているのだ。
世の中は。
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