悪魔は甘く微笑んで【恋人は魔王様 番外編◇ドリーム小説】
キスの回数も、
蕩けそうな言葉の数々も、
彼の指先の軌跡も、
舌が這っていく場所も。

全て、すべて。
途中からは覚えていられなくなった。


二人の、持て余しすぎた熱い気持ちを全て閉じ込めたような熱だけが重なり合って溶け合って、余計に熱を上げていく。

それはまるで、芳醇な香りを放ち、たっぷりの蜜を滴らせている熟れすぎた果実にもよく似ていた。



持て余すに決まっているのに、目が離せない。



どろどろになりながら、誰にも食べられず、堕ちて行くだけの、それは。
淫靡な魅力を孕んでいる。


重ねられるところ全て、余すことなく重ね合わせ。
二人で奏でるハーモニーは、そう。

観客の居ない、素敵な舞台。


私はきっと、この記念すべき初舞台を。
一生忘れることなんて、ないと思う。



例え、記憶を消されたとしても。




だって、この熱は。
私の身体に刻まれた、この痕は。

悪魔が確かに存在したという証だわ。
時とともに、熱も痕も消えてしまっても。


私は、絶対に忘れない。
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