悪魔は甘く微笑んで【恋人は魔王様 番外編◇ドリーム小説】
10.postlude
■postlude(ポストリュード『後送曲』)
人間界 日本
遅咲きの桜が咲く 神社の片隅――
桜の淡い香りに、春の訪れを感じる4月。
「……ユリア。
桜は愛でるものじゃないのか?」
スプリングコートにしては重たい色……黒のコート……を身に纏った、青年、ことキョウがその綺麗な顔を傾けて問う。
百合亜は、匂いを嗅いでいた桜の花から顔を放した。
百合亜が青年を見上げれば、艶やかな長い黒髪がふわりと揺れた。
「だって、すぐに緑の葉っぱに覆われちゃうんだよ、これ。
ちゃんと春の匂いを胸いっぱいに吸い込んどかなきゃ」
「……そんな風習、聞いたこと無いが」
「私のオリジナルなんだから、別にいいでしょう?
桜餅の匂いがして、幸せな気分になれるんだからっ。
それとも、風習に無いことはやらない主義?」
馬鹿にされていると感じたのか、早乙女百合亜は唇を尖らせて反論する。
二人は、町の外れにある人気の無い寂れた神社の片隅にある遅咲きの桜を楽しんでいるところだった。
ここのところ、魔界での業務に追われていてすっかり花見のシーズンを逃してしまったキョウに、百合亜はすっかりご機嫌斜めだった。
そんな二人に、この場所を教えたのはジュノ。
もっとも、ジュノ本人は本日、ここには足を運んでいない。
人間界 日本
遅咲きの桜が咲く 神社の片隅――
桜の淡い香りに、春の訪れを感じる4月。
「……ユリア。
桜は愛でるものじゃないのか?」
スプリングコートにしては重たい色……黒のコート……を身に纏った、青年、ことキョウがその綺麗な顔を傾けて問う。
百合亜は、匂いを嗅いでいた桜の花から顔を放した。
百合亜が青年を見上げれば、艶やかな長い黒髪がふわりと揺れた。
「だって、すぐに緑の葉っぱに覆われちゃうんだよ、これ。
ちゃんと春の匂いを胸いっぱいに吸い込んどかなきゃ」
「……そんな風習、聞いたこと無いが」
「私のオリジナルなんだから、別にいいでしょう?
桜餅の匂いがして、幸せな気分になれるんだからっ。
それとも、風習に無いことはやらない主義?」
馬鹿にされていると感じたのか、早乙女百合亜は唇を尖らせて反論する。
二人は、町の外れにある人気の無い寂れた神社の片隅にある遅咲きの桜を楽しんでいるところだった。
ここのところ、魔界での業務に追われていてすっかり花見のシーズンを逃してしまったキョウに、百合亜はすっかりご機嫌斜めだった。
そんな二人に、この場所を教えたのはジュノ。
もっとも、ジュノ本人は本日、ここには足を運んでいない。