悪魔は甘く微笑んで【恋人は魔王様 番外編◇ドリーム小説】
「サクラモチ?」
耳慣れぬ単語に、かすかにキョウの形の良い眉が歪む。
彼がこの日本で百合亜と暮らし始めて、まだ1年経過していない。
百合亜は、ふふと笑う。
「知らないの? 桜餅。
キョウにも知らないものって少しはあるのね。
じゃあ、私が……作ってあげるのは無理だけど、買ってあげる☆」
博識のキョウの知らないものを見つけたとあって、少しはご機嫌になったようで、百合亜はにこりと笑いを零す。
キョウはそんな百合亜の頭に手を伸ばし、いつの間にか乗っかった桜の花びらをそっととって見せた。
「あら、百合亜ちゃんじゃない」
不意に声を掛けられて、百合亜は振り向く。
そこには、母の友人、きよみが居た。
普段着というよりは、少しグレードアップした服に身を包んでいる。
「あ、きよみさんっ。
こんにちは」
「まぁ、素敵な方と一緒にいるのね。
彼が京極さん?」
「……ママったらお喋りなんだから」
百合亜は唇を尖らせた後、すぐに笑顔を作った。
いくら母に問題があるとしても、その友人に八つ当たるのは大人気ないというものだ、なんて考え直したのだ。
「ええ、そうなんです。
キョウ、彼女、ママのお友達のきよみさん。
小さいときからお世話になってるの」
キョウの動きが、止まる。
それはまるで、珍しい化石を発見した研究者のような眼差しだった。
そうして、小さくふっと笑いを零した。
本当に小さかったので、キョウに見慣れている百合亜でなければ、見落としていたかもしれない。
耳慣れぬ単語に、かすかにキョウの形の良い眉が歪む。
彼がこの日本で百合亜と暮らし始めて、まだ1年経過していない。
百合亜は、ふふと笑う。
「知らないの? 桜餅。
キョウにも知らないものって少しはあるのね。
じゃあ、私が……作ってあげるのは無理だけど、買ってあげる☆」
博識のキョウの知らないものを見つけたとあって、少しはご機嫌になったようで、百合亜はにこりと笑いを零す。
キョウはそんな百合亜の頭に手を伸ばし、いつの間にか乗っかった桜の花びらをそっととって見せた。
「あら、百合亜ちゃんじゃない」
不意に声を掛けられて、百合亜は振り向く。
そこには、母の友人、きよみが居た。
普段着というよりは、少しグレードアップした服に身を包んでいる。
「あ、きよみさんっ。
こんにちは」
「まぁ、素敵な方と一緒にいるのね。
彼が京極さん?」
「……ママったらお喋りなんだから」
百合亜は唇を尖らせた後、すぐに笑顔を作った。
いくら母に問題があるとしても、その友人に八つ当たるのは大人気ないというものだ、なんて考え直したのだ。
「ええ、そうなんです。
キョウ、彼女、ママのお友達のきよみさん。
小さいときからお世話になってるの」
キョウの動きが、止まる。
それはまるで、珍しい化石を発見した研究者のような眼差しだった。
そうして、小さくふっと笑いを零した。
本当に小さかったので、キョウに見慣れている百合亜でなければ、見落としていたかもしれない。