悪魔は甘く微笑んで【恋人は魔王様 番外編◇ドリーム小説】
去っていくジュノの後ろ姿を見ていた百合亜は息を呑む。
それが、瞬く間に<年>を重ねていったからだ。

そう、今のきよみと同い年と言っても可笑しくないような姿に。

「……ねぇ、ジュノって年齢変えられるの?」

「人間界で何歳に見せるか、なんて悪魔の自由だろ?」

傲慢に言い放つキョウに、百合亜は眉を潜める。

「……キョウの本当の姿も、見せてくれる?」

「辞めておこう」

「どうしてよ。
 分かった、私がドンびくほどの、ものすっごーくおじいちゃんだったりして」

キョウは百合亜を見下ろして、眉を潜める。

「百合亜に本当の姿を見せて、これ以上俺に夢中にさせると、こっちの身が持たないからな」

「……なんですってっ」

声を荒げる百合亜に、キョウはくすりと笑いを漏らす。

「そんなことより、ほら。
 サクラモチ」

キョウは百合亜の肩に手をかけると踵を返す。
柔らかい春風が、かしましい二人を優しく包み込む。




神社の境内で、いつぞや途切れてしまった恋物語の続きがひっそりと始まるのか、否か。
その答えを他人が見届けるなんて野暮というものだ。
遅咲きの桜だけが、きっと。
それを知るのだろう。

はらりはらりと、その、淡いピンクの破片を。
見詰め合う二人の頭上に散らしながら。


Fin.
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