秘宝-戦い-第Ⅰ幕
2人は鳥の居るところに来た。

有香は静かに鳥に近寄り、右手で傷口に触れた。

ドクンッと鳥が動いた。

有香の手が赤く染まる。
有香は気にしないで、傷口を抑えた。

「大丈夫だよ…。もう、誰も傷つけないよ」

さっきの殺意に満ちた有香はどこにもいなかった。

今は優しい人間の顔だった。

アレンはそっと有香の近寄り、右腕を掴んだ。

その時、有香の右腕の傷に気づいた。
さっき、やられたんだろうか…。

「この鳥…さっきの奴らにやられたんだよ…」

「ユカも…?」

「うん。…傷口の形が一緒でしょ?」

アレンはユカの傷口に触れた。
ユカの血がアレンの指を伝う。

「アレン…」

「ごめんな…、人間界から来たばかりのお前に…頼ってばっかりで怪我させてしまって…」

「そんなのどうでもいいよ。私、覚悟出来てっから♪」

有香は涙を流した。

一粒の滴が鳥の傷口に落ち、鳥が鳴いた。

「大丈夫。もう、あなたを傷つける人は居ないよ」

鳥は有香の言葉か分かったように、頷いた。

アレンはユカが凄いと思った。

人間界から来たとは思えない…

「アレン、ちょっと鳥見ててね!!」

ユカは立ち上がり、森へ行った。

しばらくすると、薬草を持ってきた。

「なんだか分かんないけど…においのする草と葉っぱ持って来たっ」

アレンは驚いた。

ユカはこの世界の人でも猛勉強しないと分からない、草と葉の匂いの違いを分かっていたのだ。

「これ…軟膏っぽい匂い」

ユカが一枚の葉を差し出した。

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