衆道剣風録~契りの剣 四 決死!天寧寺!
七
皆呆気にとられた。
修理は鼻を押さえて頭を抱えた。
庄左右衛門は言った。
「静音殿。今日は遅い。明日になされよ。見れば旅でお疲れの様子。今晩は風呂に入り、飯を食べてゆっくりと鋭気を養いなされ」
静音は顔を上げて庄左右衛門を見た。
「風呂・・・飯・・・」
静音は思わずごくりと唾を呑んだ。
庄左右衛門は、静音がどれほど苦労して旅をしてきたかよく分かった。身のこなし、礼儀作法を見ればその出自は高い身分だろう。何不自由なく暮らしていたに違いない。その一途な言動からしても親御に慈しまれて育ったからだろう。
修理が何故静音を旅に連れて来なかったか、理解していた。
静音は必死に訴えた。
「でも・・・卑怯な修理のこと、またもや逃げるやも知れませぬ!」
「では儂等が見張って居てやろう」
静音は長い時間掛けて風呂に入っていた。時々着替え部屋に声を掛ける。
「修理!いるか!」
「・・・うむ。ここに居る」
鼻に膏薬を貼った修理が、そっと風呂場の戸を少し開いて覗こうとした。
ばしゃっと湯が目に当たる。
「捨吉さん!上がるので修理をお願いします!」
捨吉が修理に付いて部屋に行く。
「・・・修理はん、申し訳ないわ」
「いや・・・連れてきてくれて礼を言う」
静音が京の喧噪の中をあのような風体で歩くよりは、自分が殺されても身近に置いた方が良い。
修理は鼻を押さえて頭を抱えた。
庄左右衛門は言った。
「静音殿。今日は遅い。明日になされよ。見れば旅でお疲れの様子。今晩は風呂に入り、飯を食べてゆっくりと鋭気を養いなされ」
静音は顔を上げて庄左右衛門を見た。
「風呂・・・飯・・・」
静音は思わずごくりと唾を呑んだ。
庄左右衛門は、静音がどれほど苦労して旅をしてきたかよく分かった。身のこなし、礼儀作法を見ればその出自は高い身分だろう。何不自由なく暮らしていたに違いない。その一途な言動からしても親御に慈しまれて育ったからだろう。
修理が何故静音を旅に連れて来なかったか、理解していた。
静音は必死に訴えた。
「でも・・・卑怯な修理のこと、またもや逃げるやも知れませぬ!」
「では儂等が見張って居てやろう」
静音は長い時間掛けて風呂に入っていた。時々着替え部屋に声を掛ける。
「修理!いるか!」
「・・・うむ。ここに居る」
鼻に膏薬を貼った修理が、そっと風呂場の戸を少し開いて覗こうとした。
ばしゃっと湯が目に当たる。
「捨吉さん!上がるので修理をお願いします!」
捨吉が修理に付いて部屋に行く。
「・・・修理はん、申し訳ないわ」
「いや・・・連れてきてくれて礼を言う」
静音が京の喧噪の中をあのような風体で歩くよりは、自分が殺されても身近に置いた方が良い。